五度圏の表の使い方・図の覚え方は?コード進行の転調・裏コードとは

 
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 こんにちは。歌い手&作詞作曲DTMerのLettyです。

作曲をするのにあたり、とても便利に使える資料があります。それを、「五度圏(別名:サークル・オブ・フィフス)」といいます。五度圏とは、以下のような表のことです。

この表が手元にあることで、様々な情報を一目で把握することができます。そのため、音楽理論が苦手な人でも、作曲をスムーズに進めやすくなります。ギターやピアノを使って作曲する人も多いと思いますが、壁や見やすいところに五度圏のポスターを貼っておくのがおすすめです。

そこで今回は、五度圏の表の見方と活用法について詳しく説明していきます。

五度圏の表からわかること

五度圏の表からは、作曲に使える様々な情報を視覚的に得ることができます。具体的に得られる情報は、以下の13個になります。

・キーと調号の関係

・スケールがわかる

・ダイアトニックコードがわかる

・ダイアトニックセブンスコードがわかる

・平行調がわかる

・コードの役割(機能)がわかる

・曲のキーを判別できる

・ツーファイブワンがわかる

・セカンダリードミナントがわかる

・裏コードがわかる

・近親調がわかる

・転調させることができる

・モーダルインターチェンジがわかる

それぞれについて、詳しく説明していきます。

キーと調号の関係

楽譜に書いてある♯(シャープ)や♭(フラット)のことを、音楽用語では調号といいます。♯は「半音上がる」、♭は「半音下がる」ということを意味しています。

楽譜上にこの♯や♭が何個つくかによって、曲のキーが決まります。下の画像で、赤い枠で囲っている部分が、調号の種類と数を表しています。

キーというのは、簡単に言うと、「そこに出てくる音だけを使えば、違和感のない曲が作れますよ」というルールみたいなものです。それぞれのキーには、「ドレミファソラシド」のような音階の塊が存在します。これを、スケールといいます。

スケールは、大きく分けると明るいイメージのメジャースケールと暗いイメージのマイナースケールがあります。

また、スケールは必ずしも「ド」の音から始まるわけではなく、他の音から始まるものもあります。つまり最初の始まりの音が何なのか、また調号の種類と数はどうなっているのか、それによってスケールの名前が変わってきます

スケールがわかる

先程スケールについて少し触れましたが、五度圏の表ではメジャースケールとマイナースケールを把握することができます。

それぞれのアルファベットは、コードネームを表しています。円の外側の青い部分がメジャーキー、内側の赤い部分がマイナーキーとなっています。内側のマイナーキーのアルファベットには、全て「m」がついています。これは、「マイナー」という意味を表しています。

よく使われている「ドレミファソラシド」という言葉は実はイタリア語で、これを英語に置き換えると「CDEFGABC」となります。英語表記は一番よく使われるので、覚えるようにしてください。五度圏の表でも、英語表記が使われています。

ピアノの鍵盤で言うと以下のようになります。

また、最初の方にも説明しましたが、♯は「半音上がる」、♭は「半音下がる」という意味になります。それぞれ黒鍵のところに書いてある2つの音名は、表記の仕方は違いますが音としては同じになります。一番左側の黒鍵を例とすると、C#は「ド」の半音上、D♭は「レ」の半音下という意味です。

そして、スケールを知りたい時は、音と音の距離を測るものさしのようなものを使います。これに当てはめることで、キーが変わったとしても同じように音の距離を把握することができます。この、音と音の距離は英数字で表記され、「ディグリーネーム」と呼ばれています。

五度圏の表から好きなキーを選んで、ディグリーネームの型に特定の音を当てはめるだけで、そのキーのスケールを把握することができます。

メジャーキーとマイナーキーの、ディグリーネームの型はそれぞれ以下のようになっています。

この決まった型に、Ⅰ~Ⅶの順にコードのルート音を当てはめていきます。ディグリーネームについては後でもう少し細かく説明しますので、ここではアルファベットの英数字にのみ注目してください。まずは、メジャーキーの場合を例として見ていきます。

例えば、Key=Cとした時のスケールを知りたいとします。そうすると、五度圏の表のうちの「C」と書いてあるところを基準として、そこから扇形に囲った部分を見ます。

Key=Cはメジャーキーになるので、メジャーキーの場合のディグリーネームの型に音を当てはめていきます。英数字の順番に当てはめてみると、以下のようになります。

ディグリーネーム(メジャーキー) Ⅱm Ⅲm Ⅵm Ⅶm(♭5)
スケール C(ド) D(レ) E(ミ) F(ファ) G(ソ) A(ラ) B(シ)

これで、Key=Cのスケールを把握することができました。

Key=Cの場合は♯や♭が含まれていなかったので関係ありませんでしたが、もしコードのルート音に♯や♭などの調号がついている場合は、それも含める必要があります。ただし、「m(マイナー)」や「(♭5)」は、スケールを把握するだけであれば無視して構いません。

それでは、今度は調号がついている場合を例として、マイナーキーの場合を見てみましょう。

今度は、Key=C#mのスケールを導き出していきます。すると、五度圏の表のうちの「C#m」と書いてあるところを基準として、そこから扇形に囲った部分を見ます。

今度は、マイナーキーの場合のディグリーネームの型に、音を当てはめていきます。今回は、コードネームに#が含まれているものがありますので、それも含めます。英数字の順番に当てはめてみると、以下のようになります。

ディグリーネーム(マイナーキー) Ⅰm Ⅱm(♭5) ♭Ⅲ Ⅳm Ⅴm ♭Ⅵ ♭Ⅶ
スケール C#(ド#) D#(レ#) E(ミ) F#(ファ#) G#(ソ#) A(ラ) B(シ)

これで、Key=C#mのスケールを把握することができました。

ダイアトニックコードがわかる

スケールの中に出てくる音だけを使って、音を3つ重ねてできた和音のことを、ダイアトニックコードといいます。五度圏の表で一番よく使用すると思われるのが、それぞれのキーにおけるダイアトニックコードを確認する時です。

例えば、Key=Cの場合のダイアトニックコードは、以下のようになっています。

これを五度圏の表から見つけるには、選んだキー「C」の周りを扇型に囲みます。

この、扇型に囲んだ時に含まれている7つのコードが、Key=Cのダイアトニックコードということになります。

では、もう一つ別の例を見てみましょう。Key=C#mの場合のダイアトニックコードは、以下のようになっています。

これを五度圏の表から見つけるには、選んだキー「C#m」の周りを扇型に囲みます。

この、扇形に囲んだ時に含まれている7つのコードが、Key=C#mのダイアトニックコードということになります。

ダイアトニックセブンスコードがわかる

ダイアトニックコードの場合は3つの音からできた和音でしたが、ダイアトニックセブンスコードの場合は4つの音からできた和音になります。3和音の場合はトライアド、4和音の場合はテトラッドとも呼ばれます。

例えば、Key=Cの場合、3和音と4和音の違いは以下のようになります。

4和音の場合には、すべて「7」という数字がついています。これは、基本のダイアトニックコードの3和音に、プラスアルファで上に1音つけ足すことで、ちょっとオシャレに聞こえるようにしたコードです。

3和音のダイアトニックコードのみを使って曲を作っていると、「違和感はないけど何か物足りない…」と思うことがあったりしますが、そんな時にセブンスコードを混ぜてみるとオシャレな雰囲気が出てくれます。

スケールの説明をした時に、ディグリーネームの型というものが出てきましたよね。その時、「7という数字は一旦無視してください」と言いましたが、なぜ7という数字が出てくるのかここで説明します。

まずは、音と音の距離をピアノの鍵盤で見てみましょう。

上の画像に書いてある赤字と青字の度数が、ものさしの目盛りのようなものだと思ってください。この目盛りは、どこからスタートしても音と音の距離が変わることはありません。右に1つずらせば、他の目盛りも全て右に1つずつずれていくようなイメージです。

「長」はメジャー、「短」はマイナーを意味します。また、「完全」というのは1度、4度、5度、8度にしかつきません。減5度は、完全5度から半音下という意味です。

では、仮にこの鍵盤上で「CM7」のコードを鳴らしてみます。

上の画像で、ピンクの丸がついているところが、「CM7」コードの押さえる場所になります。3和音の「C」というコードの時は、CとEとGしか押さえませんが、4和音になるとBも押さえます。

Bのところを見てみると、赤字で長7度と書いてありますよね。つまり、7度の位置が長(メジャー)にある、ということなので、元々の「C」というコードにM7(メジャーセブンス)をつけて、「CM7」というコードネームになっています。

では、次は「Dm7」のコードを鳴らしてみましょう。

今度はDがルート音になるので、完全1度の場所はDとなります。

3和音の「Dm」というコードの時は、DとFとAを鳴らします。この時の「m(マイナー)」というのは、3度の音の位置がどこにあるのかということを表しています。3度の位置が長(メジャー)の場合は何もつけず、短(マイナー)の場合は「m(マイナー)」をつけます

Fの位置を見てみると、短3度になっていますよね。だから、「Dm」というコードネームになるのです。

そして、「Dm7」というコードは「Dm」に7度の音が加わります。長7度の時は「M7」を付け足しましたが、短7度の時はただの「7」のみを付け足します。

つまり、Dmというコードに7を足して、「Dm7」というコードネームになるのです。

コードネームの意味は、何となくそういうことなんだなと思ってもらえれば大丈夫です。そこで、ディグリーネームの型をもう一度見てみましょう。

これを見れば、どこに「M7」をつけてどこに「7」をつければいいのかが、すぐにわかります。つまり、これにKey=Cを当てはめてみると、以下のようにセブンスコードを把握することができます。

平行調がわかる

メジャーキーは、それぞれ違うどこかのマイナーキーと調号が同じになります。この関係を、平行調といいます。下の画像で、赤い矢印が指しているキー同士が、平行調になっています。

例えば、Key=Cのスケールで使われている音は、「ドレミファソラシド」になります。この場合、♯や♭などの調号は1つもつきません。

続いて、Key=Amのスケールで使われている音は、「ラシドレミファソラ」となります。こちらも、♯や♭は1つもつきません。

つまり、Key=CとKey=Amは調号の数が同じであり、平行調の関係であると言えます。もっと簡単に言うと、キーの名前と始まりの音が違うだけで、スケール上で使われている音自体は同じということです。

五度圏の表を見ることで、全てのキーにおいてのこの関係を、一瞬で視覚的に把握することができます。

コードの役割(機能)がわかる

ダイアトニックコードというのは、それぞれ違った役割を持っています。また、メジャーキーとマイナーキーではコードの役割が少し変わりますので、それについて説明します。具体的には、以下の2つです。

・メジャーキーにおけるダイアトニックコードの役割

・マイナーキーにおけるダイアトニックコードの役割

それぞれについて、ここから詳しく解説します。

メジャーキーにおいてのダイアトニックコードの役割

まずは、メジャーキーにおけるダイアトニックコードの役割を説明します。主に重要な役割を果たしているコードが3つあります。その3つのコードのことを、スリーコードといいます。

では、一体どのコードがその役割を果たしているのでしょうか?例として、Key=Cの場合のダイアトニックコードを見てみましょう。

ディグリーネームでいうと、赤い枠で囲ったⅠとⅣとⅤがスリーコードにあたります。つまり、Key=Cの場合だと「C」「F」「G」になります。

これらの3つのコードの役割は、ジェットコースターでイメージすると以下のような感じになります。

【トニック】

人は、地面に着地している時が一番安心できて、安定しています。つまり、トニックには着地したような感じや、元の場所に戻ってきたような安定感があります

【サブドミナント】

ジェットコースターの始まりは、階段を上っていくように地面から離れていきますよね。そのため、地面にいた時よりも少し不安感があります。つまり、サブドミナントにはやや不安定な感じがあります

【ドミナント】

ジェットコースターにおいての頂上は、地面から最も離れた高い位置にあるため、不安感がピークに強まりソワソワしますよね。つまり、ドミナントには宙に浮いているような不安定な感じがあります。この不安感は、地面から離れている分、サブドミナントよりも更に強いです。

また、宙に浮いているということは、早く地面に着地して安心したいのです。そのため、ドミナントにはトニックに向かいたくなるという性質があります。

また、「Ⅰ」「Ⅳ」「Ⅴ」以外のコードは、スリーコードの代わりに置き換えて使うことができるというコードです。これらのコードのことを、代理コードといいます。下の画像で、青枠で囲ったコードが代理コードになります。

例えば、C→F→G→Cというコード進行を使って曲を作っていたとして、少し変化をつけたいとします。そうすると、C→Dm→G→Cとしてもいいわけです。このように、代理コードを使うことでコード進行に様々なバリエーションをつけることができます。

つまり、赤字のトニックは青字のトニックへ、赤字のサブドミナントは青字のサブドミナントへ、赤字のドミナントは青字のドミナントへと置き換えることができます。

しかし、Ⅶm(♭5)は、ちょっと特殊なので使い方に注意が必要です。なぜなら、Ⅶm(♭5)はドミナントには分類されますが、Vとは少し性質が異なるからです。Ⅶm(♭5)の場合は、トニックに向かいたくなる性質はあまり強くありません。

それでは、五度圏の表からコードの役割をすぐに把握する方法を見ていきましょう。
上の画像の型に、選んだキーのダイアトニックコードを当てはめるだけです。これにより、どのキーにおいてもコードの役割をすぐに把握することができます。

つまり、Key=Cの場合だと、以下のようになります。

「C」を扇形に囲んだ時に含まれる7つのコードに対して、それぞれ役割を当てはめます。このように、メジャーキーであればどのキーの場合でも、この型を使ってコードの役割をすぐに把握することができます。

マイナーキーにおいてのダイアトニックコードの役割

続いて、マイナーキーにおけるダイアトニックコードの役割を説明します。例として、Key=Amの場合のダイアトニックコードを見てみましょう。

メジャーキーの時と同じように、赤字のところがスリーコード、青字のところが代理コードになっています。しかし、メジャーキーの時とは役割が少し変わっています。

それぞれのコードの役割は、以下のようになっています。

トニックマイナー→着地したような感じや、元の場所に戻ってきたような安定感があります

ドミナントマイナー→メジャーキーのドミナント(D)の時みたいに、トニックへ向かう力があまり強くありません。そのため、マイナーキーであっても、ドミナントマイナー(Dm)の代わりにドミナント(D)が使われます。

サブドミナントマイナー→トニックマイナー(Tm)へ向かいたくなる性質を持っています

また、♭Ⅵは、サブドミナントマイナーの代理コードにも、トニックマイナーの代理コードにもなります。

それでは、五度圏の表からコードの役割をすぐに把握する方法を見ていきます。

メジャーキーの時と同じように、この決まった型に選んだキーのダイアトニックコードを当てはめます。つまり、Amの場合だと、以下のようになります。

「Am」を扇形に囲んだ時に含まれる7つのコードに対して、それぞれの役割を当てはめます。マイナーキーであれば、どのキーであってもこの型が使えます。

曲のキーを判別できる

五度圏の表を見ることで、曲のキーを大体把握することができます。大体というのは、2つに絞り込めるということです。

なぜなら、平行調の説明をした時に、メジャーキーはそれぞれ違うどこかのマイナーキーと調号が同じになるという話をしました。調号が同じということは、キーの名前が違っても使われている音は同じということです。つまり、調号を絞ることができれば、その2つのどちらかのキーがその曲のキーということになります。

では、「ふるさと」という曲を例に、キーを絞ってみましょう。

上の楽譜を見ると、この曲の場合は♭が1つだけついていますよね。つまり、五度圏の表の中で、♭が1つだけついている箇所に注目します。

♭が1つだけついている箇所を見ると、「F」と「Dm」がそれにあてはまります。つまり、この曲のキーは、Key=FもしくはKey=Dmのどちらかであるということがわかります。

この曲がKey=FなのかKey=Dmなのかは、当てはめているコード進行によって変わります。この楽譜に書かれているコードに従うと、最後の音がFで終わっているのでKey=Fということになります。しかし、Key=Dmとしてコード進行をあてはめていくこともできます。

ツーファイブワンがわかる

ダイアトニックコードの中でコード進行を作る場合において、ディグリーネームでいうと「Ⅱ→Ⅴ→Ⅰ」の順でコードが並んでいる進行のことを、ツーファイブワンといいます。長調(メジャー)の場合でも短調(マイナー)の場合でも、五度圏の表からそれぞれのキーにおいてのツーファイブワンを把握することができます。

例えば、Key=Cの場合のツーファイブワンは、4和音の場合だと「Dm7→G7→CM7」となります。

Dm7はサブドミナントなので少し不安定な響き、G7はドミナントなので不安定な響き、CM7はトニックなので安定した響きになります。このように、サブドミナント→ドミナント→トニックという流れは、とても自然に音の響きに変化を与えることができます。

セカンダリードミナントがわかる

ダイアトニックコードのみで曲を作ることは十分可能ですが、それ以外のコードも使えた方が、表現の幅を広げることができます。ダイアトニックコード以外のコードのことを、「ノンダイアトニックコード」といいます。ここでは、ダイアトニックコードのキーの雰囲気を維持しつつも、自然にノンダイアトニックコードを織り交ぜる方法を解説します。

まず復習ですが、メジャーキーにおけるドミナントコードは、トニックコードへ進みたくなる性質がありましたよね。このように、不安定なところから安定した場所に移動することで、モヤモヤした感じを解決させるという音の動きのことを、ドミナントモーションといいます

ドミナントモーションの原理は、厳密に言えば2種類あります。具体的には、「強進行」と「トライトーン」という2つの原理です。

➀強進行

コード進行において、ルート音が完全4度上に移動または完全5度下に移動することを、強進行といいます。例えばKey=Cの場合、以下のようにGからCへ移動する動きが強進行となります。

Gからスタートする場合に限らず、他の音からスタートした場合でも、完全4度上または完全5度下に移動していれば、強進行となります。

➁トライトーン

音と音の距離は、ピアノの鍵盤を1つ移動すると半音、2つ移動すると全音と数えます。この距離が全音3つ分になっている関係のことをトライトーンといい、2つの音を同時に鳴らすと強烈な不協和音が生じます。

例えば、「シ」と「ファ」がトライトーンの関係になっています。

それでは、強進行とトライトーンの性質をふまえて、例としてG7からCへ移動するコードの動きを見てみましょう。

 

G7というコードには、トライトーンの関係にある「シ」と「ファ」の音が含まれています。つまり、G7はモヤモヤした響きのコードになっています。

それに対して、Cというコードには、長3度の関係にある「ド」と「ミ」が含まれています。この長3度という関係は、とても安定した響きになっています。

また、ルート音は「ソ」から「ド」に移動しており、この動きは強進行になっています。

これらの性質により、G7からCに移動させることで、不安定な場所から安定した場所に解決したような感じを与えることができます。

このように、トライトーンと強進行が組み合わさったドミナントモーションの効果を利用したコード進行の動きのことを、セカンダリー・ドミナントといいます。

セカンダリー・ドミナントは、五度圏の表からメジャーキーとマイナーキーどちらの場合でも把握することができます。見つけ方は簡単で、選んだコードの右隣のコードにセブンスをつけたものが、セカンダリー・ドミナントのコードになります。

五度圏の表で見てみると、以下のような感じになります。

メジャーキーの場合は、着地したいコードの右隣りのコードにそのまま7(セブンス)をつけます。マイナーキーの場合は、着地したいコードの右隣りのコードのm「マイナー」を取っ払って、7(セブンス)をつけます。

つまり、「G7→C」や「D7→Gm」といったコードの流れになり、この時にセブンスをつけたコードがセカンダリー・ドミナントということになります。

裏コードがわかる

ダイアトニックコードにおいて、コードの役割のお話をした時に、メジャーキーのV7の代理コードはⅦm7(♭5)になるということがわかりましたよね。Key=Cを例として、おさらいしてもう一度見てみると、以下のようになっています。赤枠の部分がスリーコード、青枠の部分が代理コードになっています。

しかし、これはあくまでもダイアトニックコードの中での置き換えになります。ダイアトニックコード以外でも、これと同じように代理として使えるコードがあります。

ダイアトニックコード以外で、V7の代理となれるコードのことを裏コードといい、「♭Ⅱ7」のことを指します。裏コードも、V7と同じように不安定な響きになっており、トニックに向かいたくなる性質があります。

五度圏の表において、対角線上に存在するコードから裏コードがわかります。

また、裏コードは、ジャズなどで使用されることが多いです。一度つけたコードを見直して、別のコードに書き換えたりなどを行う、リハーモナイズという作業で使うことが多いです。

それでは、裏コードの具体的な使い方を3つ解説します。

・使い方➀ドミナントコードを裏コードに置き換える

・使い方②セカンダリードミナントの代わりとして置き換える

・使い方③ツーファイブワン

それぞれについて、詳しく解説します。

使い方➀ドミナントコードを裏コードに置き換える

例えば、Key=Cのダイアトニックセブンスコードのみでコード進行を作るとします。「Dm7→G7→CM7」というコード進行で見てみましょう。ディグリーネームでいうと、「Ⅱm7→V7→ⅠM7」という流れになります。V7というのはKey=Cにおいてのドミナントコードになりますので、V7を裏コードに置き換えることができます

先ほどの五度圏の表を見てみると、ピンク色のマルで囲まれた「G」の対角線上には「C#/D♭」というコードがありますよね。この、対角線上にあるコードにもセブンスをつけてあげると、「C#7」あるいは「D♭7」というコードになります。これが、裏コードになります。

つまり、この場合の「G7」は「C#7」あるいは「D♭7」というコードに置き換えることができます。

使い方➁セカンダリードミナントの代わりとして置き換える

例えば、セカンダリードミナントを取り入れた「G7→C」というコード進行があるとします。この場合もG7を裏コードに置き換えることができます。先ほどと同じように、五度圏の表の中で「G」の対角線上にある「C#/D♭」にセブンスをつけてあげると、「C#7」あるいは「D♭7」という裏コードになります。

つまり、この場合のG7は「C#7」あるいは「D♭7」というコードに置き換えることができます。

使い方➂ツーファイブワン

例えば、Key=Cのダイアトニックセブンスコードでツーファイブワンの進行を作ります。すると、「Dm7→G7→CM7」というコード進行になります。この時のG7を、裏コードに置き換えることができます

すると、「Dm7→D♭7→CM7」という進行になります。

近親調がわかる

基準とする調に近い関係にある調のことを、近親調といいます。近い関係というのは、わかりやすく言うと、共通音が多いということです。前にも説明しましたが、調=キーのことです。

例えば、Cを基準とした時の近親調は、以下のようにCの周りを扇形に囲った時に含まれる部分になります。

つまり、Key=Cの近親調は、「Key=G」「Key=F」「Key=Am」「Key=Em」「Key=Dm」ということになります。

基準とする調を右に1つずらせば、近親調も1つずつずれます。どの調を基準とした場合でも、このように扇形で囲った時に含まれる部分が近親調となります。

近親調同士は、共通音が多いため転調させやすいと言われています。

転調させることができる

五度圏の表を見ることで、曲のキーを別のキーに変えてコードを付け直すことができます。これは、つまり転調させることができるという意味です。

例えば、Key=Cで曲を作った場合、曲中に「F→G→Em→Am」というコード進行があるとします。これを、Key=Gに転調させたいとします。

すると、五度圏の表でまずはCを基準として扇形に囲んだ時に含まれる部分を見ます。

➀→➁→➂→➃の順にコードが並んでいます。

これをKey=Gに置き換えるためには、今度はGを基準として扇形に囲んだ時に含まれる部分を見ます。キーが変わっても、コードを並べる順番は変わりません。

つまり、Key=Gに置き換えると以下のようになります。

Key=Cの時と同じように、➀→➁→➂→➃の順でコードを並べることで、元のキーから転調させたキーのコードに置き換えることができます。

モーダルインターチェンジがわかる

五度圏の表から、モーダルインターチェンジを導き出すことができます。これから説明するのは、以下の4つの内容です。

・モーダルインターチェンジとは何か

・モーダルインターチェンジの種類

・五度圏での見方:スケール名・モード名の把握

・五度圏での見方:モーダルインターチェンジで使えるコードの探し方

それぞれについて、詳しく説明します。

モーダルインターチェンジとは何か

キーの主音は変えないで、一時的に別のスケールからコードを借りてくることを、モーダルインターチェンジといいます。モーダルインターチェンジも、ダイアトニックコードの中にノンダイアトニックコードを織り交ぜるテクニックのうちの1つです。ざっくり言うと「モードを交換する」という意味で、日本語では借用和音と呼ばれています。

主音を変えないということは、例えばCメジャースケールとCマイナースケールの関係で考えると、どちらも「C」という主音(第一音)が同じになっていますよね。実際にそれぞれのスケールを見てみると、以下のようになっています。

このように、同じ主音を持っているけどキーは違うという、この関係のことを同主調といいます。曲中にモーダルインターチェンジを取り入れるということは、同主調のkeyからコードを一時的に借りてくるということになります。

例えば、元の曲がkey=Cだとしたら、曲中の一部分にkey=Cmのコードを混ぜるというのが典型的な方法です。

モーダルインターチェンジの種類

先ほどモードを交換すると言いましたが、このモードには7種類のパターンがあり、それぞれに名前があります。先ほど例としてあげたメジャースケールとマイナースケールは、モードでいうとどちらもこの7種類のうちの1つに含まれます。

また、メジャースケールから派生するモードのことを、チャーチモードといいます。チャーチモードは、教会旋法とも呼ばれています。

例えば、Key=Cの場合で見てみましょう。

上の表を見てわかる通り、アイオニアンのモードはkey=Cのコードと同じになっています。また、エオリアンのモードはkey=Cmのコードと同じになっています。しかし、モーダルインターチェンジの場合はキーという概念よりは、モードの概念として考えます

一番よく使われるのは、実質メジャーキーであるアイオニアンと実質マイナーキーであるエオリアンの2つですが、これらを含めて全部で7つのモードが存在します。

あくまでもこの表に書いてあるコードはkey=Cまたはkey=Cmで曲を作る場合に使用できますが、コード名の下に書いてあるディグリーネームに当てはめることで、別のキーの場合でも全て対応させることができます。

また、メジャーキー、ナチュラルマイナーキーで曲を作る場合にモーダルインターチェンジを取り入れたい場合はこの対応表が使えますが、メロディックマイナーやハーモニックマイナーの場合は別の対応表が必要になります。しかし、その説明は今回は省略します。

五度圏での見方:スケール名・モード名の把握

それでは実際に、五度圏の表からモーダルインターチェンジを探してみましょう。モーダルインターチェンジで使えるコードの数はかなり多いため、全てを把握するのはとても大変です。しかし、五度圏の表と下記の対応表を見ることで、全てではないですが一部を視覚的に把握することができます

まずは、スケール名とモード名を把握してみましょう。

例えば、key=Cの場合で見てみます。まず、「C」というコードの周りを扇形に囲んだ時に含まれている全てのコードを、それぞれこの対応表に書いてあるモードに当てはめてみると、以下のようになります。

CM7から順にコードのルート音を並べていくと、「C→D→E→F→G→A→B」という風に、Cアイオニアンスケールになります。Dm7からスタートすると、「D→E→F→G→A→B→C」という風に、Dドリアンスケールになります。

このように、スケールの始まりの音を変えていくだけで、それぞれの場所に対応してスケール名とモード名が把握できます

五度圏での見方:モーダルインターチェンジで使えるコードの探し方

それでは、実際にモーダルインターチェンジを使ってみましょう。モーダルインターチェンジでは、使えるコードが決まっています。

例えば、key=Cの場合において、フリジアンモードのコードを混ぜたいとします。Cフリジアンのモーダルインターチェンジで使えるのは以下の7つのコードでした。

Cフリジアン Cm7 D♭M7 E♭7 Fm7 Gm7⁻5 A♭M7 B♭m7

五度圏の先程の対応表に合わせて、Cmがフリジアンの位置になるように当てはめて扇形に囲むと、以下のようになります。

この、扇形に囲んだコードにそれぞれセブンスをつけてあげましょう。すると、Key=Fmのダイアトニックセブンスコードになり、これがモーダルインターチェンジとして使用できるコードということになります。

使えるコード Fm7 Gm7⁻5 A♭M7 B♭m7 Cm7 D♭M7 E♭7

つまり、Cフリジアンで使われているコードとkey=Fmのダイアトニックセブンスコードは、並ぶ順番が違うだけで、使用するコードは全く同じになるのです。

このように、五度圏の表からモーダルインターチェンジで使えるコードを簡単に把握することができます。

五度圏の覚え方

では、五度圏の覚え方を解説します。

まず、外側のメジャーキーの円の中で、一番上がCというのは覚えてしまいましょう。そして、アルファベットの順番は、上から右回りに「GDAEB」という並びになっています。簡単な語呂合わせで言うと、「五度会えば」と覚えると簡単です。

そのまま続けて2周目は、「G♭D♭A♭E♭B♭F」という並びになっています。2周目は、♭をつけて「五度会えば」の語呂で覚えられます。そして最後にFがつくだけです。2周目はFだけ調号が何もつきません。

最後のFは「Final」のFと考えると覚えやすいです。

つまり、「五度会えば→♭つけて五度会えば→F」で簡単にアルファベットの順番が覚えられます。

また、Cから右に1つ移動するごとに#が1つずつ増えていきます。逆に、Cから左に1つずつ移動するごとに♭が1つずつ増えていきます。

そして、内側のマイナーキーも、始まりの場所が違うだけで、先程と同じ語呂で覚えられます。メジャーキーの部分が書き出せたら、B♭の内側からスタートして「五度会えば→♭つけて五度会えば→F」で、導き出すことができます。内側はマイナーキーなので、mをつけるのを忘れないようにしましょう。

図にすると、以下のような感じです。

これで、いつでもどこでも五度圏の表を思い出すことができます。

まとめ

ここまで、五度圏の表についての説明をしてきました。五度圏の表からわかることは、たくさんあります。

・それぞれのキーにおけるスケールやダイアトニックコードが把握できる

・コードの役割を把握できる

・ダイアトニックコード以外に使える様々なノンダイアトニックコードを把握できる

・キーを判別したり、転調のさせ方がわかる

・平行調や近親調がわかる

五度圏の表を使うことで、音楽理論が視覚的に把握しやすい為、スムーズに作曲を行うことができます。そして、考えたりしなくてもすぐに知りたいことが見つけられるので、時間短縮にもなります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 
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